今回は、イタリア・セリエAの古豪ナポリと、オンラインデートアプリ「Tinder」によるスポンサーシップのアクティベーション事例をご紹介します。
Tinderは、次から次へと流れてくる異性の写真を見て、「好みなら右にスワイプ」、「好みじゃなければ左にスワイプ」で判断し、マッチするとメッセージができる世界中で流行しているオンラインデートアプリです。
そんなTinderとナポリは、長期の怪我から復帰するポーランド代表のFWアレク・ミリクがもう一度ゴールを決められるように、ファンとミリクが交流できるユニークな応援企画を仕掛けました。
Tinderでミリクと交流?
2017年5月初旬、ナポリとTinderがパートナーシップを結んだことがアナウンスされました。ナポリは、Tinderとパートナーシップを結んだ最初のスポーツチームになります。
宣伝動画があるので、こちらをご覧ください。
ミリク自身がTinderをしている動画もあります。
”I’m really proud to be part of this unique and innovative initiative with Tinder, The fans here have always given me a warm welcome and it’s really amazing to be able to interact with them directly” said Arek Milik. “Technology brings people together, just like sports, and I look forward to starting this new adventure.”
(引用元:http://www.sscnapoli.it/static/news/Tinder-Helps-Napoli-Fans-Welcome-Back-Arek-Milik–11723.aspx)
意訳:「Tinderとのユニークで革新的な取り組みに参加できて誇りに思うよ。ファンはいつだって温かく迎えてくれるし、直接対面できるなんて素晴らしいことだね。テクノロジーは、スポーツのように人と人を繋いでくれる。新しい冒険を始めるのが楽しみだよ。」
長期の怪我から復帰するミリクもこういった応援企画でファンと関われるのは嬉しいでしょうし、ファンとしても応援するチームの選手と交流できます。選手にもファンにも楽しみを与えるユニークな応援企画です。
今回はこのナポリとTinderによる応援企画の優れた点を考察しました。
Tinderがもたらすファンと選手の交流(エンゲージメント)
一点目の優れた点は、通常男女が出会うデートアプリであるTinderを、選手とファンが交流するプラットフォームとして活用し、選手とファンのエンゲージメントを高めている点です。
SNSやファンレターなどで、似たような企画が行われることはありますが、スポンサー企業の「サービス」そのものを活用した事例はこれまでに見たことがありませんでした。
Tinderを筆頭に、世界ではデートアプリの利用者は年々増えています。日本でも、「ペアーズ」などのデートアプリの注目度が高まってきています。特に、モバイル端末を使い慣れた若い世代に人気のデートアプリと、サッカークラブのコラボは非常にキャッチーです。
既存ビシネスではない新興ビジネスとパートナーシップを組み、その「サービス」を効果的に活用してファンと選手のエンゲージメントを高めています。既存の枠に捉われない、優れたスポンサーシップのアクティベーションです。
デートアプリ「Tinder」を試す自然なきっかけとなる
二点目の優れた点は、今回の応援企画を通して、消費者がデートアプリを使用するハードルを下げ、実際に試すきっかけを自然な形で作り出している点です。
流行しているとはいえ、「デートアプリってなんか怖い」、「オンラインからスタートする男女の交流はなんか嫌だ」といったマイナスなイメージも確かにあり、億劫に感じている人も多くいると思います。
そんなデートアプリを通して選手と交流する機会を提供するこの応援企画は、ファンがデートアプリを試してみる「きっかけ」となります。自分の好きなクラブが主催であることから、ファンはあまり億劫になることなく参加することができます。既存ユーザーも、企画自体がキャッチーなので「おもしろそう!」と思って参加する人もいるでしょう。
このように、応援企画を通してナポリのファンに「Tinderを使うきっかけ」を与えることで、Tinderをダウンロードする人を増やすことができます。選手応援企画ということもあり、Tinderにポジティブなイメージを持ち、それからアクティブユーザーになってくれる人が増えるかもしれません。
いずれにせよTinderの立場からすると、「自社のアプリを試してもらうきっかけとなるプロモーション」となっており、パートナーシップを効果的に活用した優れた事例と言えます。
日本では?
日本におけるデートアプリに対する一般的なイメージは、外国と比べるとマイナスなイメージの方が浸透している印象を受けます。ですので、Jリーグのクラブなどがデートアプリとのコラボを実現するのはなかなか難しいかもしれません。
しかし、今回のナポリとTinderの事例のように、自然な方法でデートアプリを試すきっかけを与えることができます。近年は「街コン」や「婚活」なども流行っており、そういった「出会い」を生むビジネスなどとスポーツが絡むことで、地域活性など新たな価値を創造できるかもしれません。
今回はデートアプリの事例をご紹介しましたが、新興ビジネスがスポーツと組むことでできることは多くあるかと思います。今後もナポリとTinderのような事例が日本でも生まれていってほしいと思います。