海のゴミをユニフォームに? 「アディダス×レアル&バイエルン」による環境保全プロジェクト

海のゴミをユニフォームに? 「アディダス×レアル&バイエルン」による環境保全プロジェクト
引用:http://blog.cpdfootball.de/2016/11/04/adidas-and-parley-for-the-oceans-release-real-madrid-and-bayern-munich-jerseys-made-from-parley-ocean-plastic/
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 今回は、バイエルン・ミュンヘンとレアル・マドリードのユニフォームサプライヤーである、アディダスによるスポンサーシップのアクティベーション事例をご紹介します。アディダスは両チームと協力し、環境保全に関わる画期的な取り組みを行いました。

海のゴミをリサイクルして製造したユニフォームを試合で着用

 アディダスは、海洋保護団体「Parley for the Oceans(パーレイ・フォー・ジ・オーシャン)との協力のもと、海洋プラスチックゴミ素材を使用したユニフォームを製造し、バイエルン・ミュンヘンとレアル・マドリードの選手たちがこのユニフォームを着用してプレーするという取り組みを行いました。

11月5日に行われたホッフェンハイム戦でバイエルンの選手たちはこのユニフォームを着用してプレーしました。また、11月26日に行われたスポルティング・ヒホン戦でも、レアルの選手たちがこのユニフォームを着用してプレーしました。

リサイクルユニフォームを着てプレーする選手
リサイクルユニフォームを着てプレーする選手(バイエルンミュンヘン公式サイトから) 
リサイクルユニフォームを着るクリスティアーノ・ロナウド
リサイクルユニフォームを着るクリスティアーノ・ロナウド(レアルマドリードの公式サイトから)
Parleyのロゴ
引用:http://www.footyheadlines.com/2016/11/adidas-parley-bayern-munich-kit.html

 両チームの胸スポンサーであるFly EmiratesとT-mobileとは、企業ロゴが薄くなることに合意の上で、このユニフォームは製造されています。ユニフォームの右下にはParleyのロゴも印刷されており、通常のユニフォームとは違うテイストになっています。

レアル・マドリードとバイエルン・ミュンヘンという2つのビッグクラブを巻き込んだこのプロジェクト。どのような戦略が練られていたのか考察します。

1. Parley for the Oceansの認知拡大と、課題解決に向けたアクション

 今回の海洋プラティック素材ユニフォームの着用は、Parley for the Oceansとアディダスの取り組みを全世界に認知を図る上で非常に効果的な手段と言えるでしょう。

レアル・マドリードとバイエルン・ミュンヘンは世界中に知れ渡るビッククラブであり、毎試合世界各国で多くの人々が試合を観ます。いつもと違うユニフォームを着ていれば、何か違和感を感じて気づきますし、Parley for the Oceansの取り組みを知るきっかけとなります。

また、11月4日に行ったプレスリリースのタイミング、バイエルンは11月5日、レアルは11月26日と、節をずらして行ったこと、この2つもポイントです。バイエルンの試合の前日にプレスリリースを出すことで、多くの人々の関心を一気に集めることができます。また、一遍に試合を行ってしまうのではなく、間隔を空けて行うことで2回の波及効果を狙えます。

Parley for the Oceansの創始者であるCyrillGutsch 氏は、今回の取り組みは海洋汚染の認知度拡大を図るだけでなく、海洋汚染問題の真の解決へと向けたアクション&戦略であると述べています。

今回の取り組みを通して、サッカーファンがParley for the Oceansの取り組みを知り、海洋汚染問題への意識が高まることで、課題解決へと繋がることが期待されます。世界中の人々の関心を集めるサッカーを活用し、Parley for the Oceansの認知と、そこからのアクションを促す巧みな戦略です。

2. 環境保全活動を通してブランドイメージアップ

 アディダスは、今回の取り組みのように、Parley for the Oceansとパートナーシップを結び、海洋保全に取り組んできました。すでに海洋プラスチックゴミをリサイクルしたスニーカーなども製造しています。

グローバルブランドを統括するアディダスグループの経営幹部Eric Liedtkeは、アディダスが2017年に100万足のシューズを海洋プラスチックで製造し、最終的には純プラスチックをサプライチェーンから取り除くと述べています。

こうした環境保全への取り組みは、アディダスというブランドのイメージアップに繋がります。CSR(企業の社会的責任)が注目される今、こうした社会や環境との関わりを重要な戦略として位置づけている企業も増えています。

世界的なスポーツマーケティングの専門企業「ニールセン・スポーツ」のファン分析調査(FANDNA)では、以下の2点が述べられています。

「ミレニアル世代(1980~2000年生まれの世代)の大多数は、社会的活動をサポートする企業についてより考えていて、これは要するに、社会的活動をサポートしている企業の商品をより購入する傾向にあるということを示している。」

「アメリカに限らず世界各国のミレニアル世代は、一般の人々に比べて社会的テーマに対する関心度が高く、約70%の人々が環境保全に関心があるとしています。」

(引用元:http://www.plus-blog.sportsnavi.com/repucom/article/27)

アディダスとしてもミレニアル世代は、今後数十年の収益を考えても、是非とも確保したいターゲットであるでしょう。そうした世代へのブランドイメージアップを図った取り組みでもあると考察します。

CSRとスポーツの可能性

 今回ご紹介した、アディダスとParley for the Oceansの取り組みは、CSRとスポーツの可能性を示してくれる事例と言えるでしょう。

Parley for the Oceansとしては、海洋保全活動の認知拡大とその解決に向けたアクションを起こしたい。アディダスとしてはブランドイメージアップを図りたい。両者がWin-Winの関係にあったからこそ実現した取り組みだと思います。

CSRと絡めたスポーツの活用事例は今後も増えていくでしょう。スポンサーシップのアクティベーションを通して、多く企業が社会的責任を果たしていくことで、より豊かな社会が創られていくことを期待したいです。

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