2019年、日本にラグビーW杯がやってくる。開催が近づくにつれ、メディアによる報道やスポンサー企業によるキャンペーンなどが大会を盛り上げていくだろう。
そんな一年後に迫ったラグビーW杯であるが、前回の2015年イングランド大会では、どのような取り組みが行われていたのだろうか。今回は特に積極的な動きを見せていたエミレーツ航空の事例をご紹介する。
エミレーツ航空はドバイに本社を構える航空会社で、ラグビーワールドカップのオフィシャルワールドワイドパートナーを2011年から務めている。ラグビーだけでなくスポーツへの投資を積極的に行っており、レアル・マドリードやパリ・サンジェルマンなどのサッカーのビッグクラブとパートナーシップを結んでいる。
そんなエミレーツ航空は2015年大会に際して、様々な取り組みを行った。
#BringingRugbyHome
2015年ラグビーW杯の時期に合わせて、#BringingRugbyHome というコアメッセージを基にキャンペーンを展開した。こちらはそのキャンペーン動画だ。
大会公式球であるギルバートのラグビーボールが、エミレーツ航空でラグビーの発祥国であるイングランドに運ばれるというストーリーとなっている。正しくBringingRugbyHome(ラグビーを母国へ)を体現するものだ。
ラグビーボールがシャワーを浴びたり記者会見に登壇するなど、人間のような描写がされておりユーモアのあるビデオとなっている。このビデオはYoutubeで845,815再生回数(2018年11月30日現在)を記録するなど多くの人に視聴された。
エミレーツ航空によるアクティベーション
エミレーツ航空が仕掛けたアクティベーションは、こちらの動画にまとめられているので、それぞれ解説していく。
https://www.youtube.com/watch?v=A6sHohNrehs
#EmiratesFlag(0分24秒〜)
ワールドワイドパートナーとして大会を盛り上げていくために、ラグビーW杯の試合が開催された11の都市のどこかに#EmiratesFlagというハッシュタグが書かれた旗を設置した。また、14〜16歳の子供達にその旗と一緒にセルフィー(自撮り)した写真をSNSに投稿してもらい、当選した子供を試合に招待するというキャンペーンも行った。
SNSで「各都市のどこに旗があるのか?」のヒントをエミレーツ航空の公式SNSで徐々に公開していくことで効果的に拡散させている。最終的には、約735,500人が参加し、FacebookやTwitter、Instagramなどで話題となった。
Facebook:199,000リーチ、2550クリック
Twitter:406,800インプレッション、8,000エンゲージメント
Instagram:160,000いいね、750コメント
Find the #EmiratesFlag in Manchester for your chance to be a #RWC2015 Flag Bearer. TCs http://t.co/TegC76EgRD pic.twitter.com/ar3fcOfC3h
— Emirates Airline (@emirates) 2015年5月27日
All-Weather Training(1分29秒〜)
ラグビーW杯は9月下旬から11月上旬までの「秋」に開催されるイベントだ。秋の季節のイングランドの気候は不安定となる。そんな気候の中でラグビーをプレーするとどうなるのかを体験できる機会を提供した。招待されたのは、上記の試合が開催される都市に住む子供たちだ。
イングランド代表のスター選手であるベン・フォデンもこの企画に参加している。
Emirates 360° Experience(2分00秒〜)
本大会が開催されると、エミレーツ航空は会場付近で様々なアクティベーションを展開している。その一つが専用ファンゾーンで行った『Emirates 360° Experience』だ。
訪れたファンは自分の国の国旗を持ってジャンプすると、その様子が360°カメラで撮影される。映像をSNSにシェアすることで、ファンは撮影された写真とスペシャルパンフレットをもらえる。最終的に約4,000もの動画を撮影し、エミレーツ航空の公式SNSで多くのインプレッションを獲得した。
Twitter:74,251インプレッション
Facebook:85,640インプレッション
Check out my @Emirates 360 celebration from the #RWC2015 Fanzone #BringingRugbyHome http://t.co/SEiU6GyGeo pic.twitter.com/MUcK8dyR8q
— George Gregan (@GeorgeGregan) 2015年10月3日
キャビンクルーの派遣(2分53秒〜)
全試合会場にエミレーツ航空のキャビンクルーが派遣された。彼らは#BringingRugbyHome のハッシュタグのフレームを持ち、現地のファンと写真撮影し交流を図っている。ファンはその写真をSNSに投稿することで抽選に参加でき、当選した5組のファンがドバイに招待された。
エミレーツ航空の制服は特徴的で、企業の代名詞になっている、そのため、会場に訪れたファンも興味を抱いてキャビンクルーと一緒に写真撮影する自然な流れができている。
選手と一緒に入場する機会の提供(3分10秒〜)
101人の14~16歳の子供やその親を招待し、キックオフ前に選手と一緒に入場する機会を提供した。インタビューの中で、子供たちは「緊張したけどとても興奮した」、親も「とても誇りに思う」などと述べている。
本大会で選手と一緒に入場する機会はファンにとっては非常に貴重であり、ここでもエミレーツ航空はファンが喜ぶ体験を提供している。
Join our #BringingRugbyHome photo challenge & you could win a trip to Dubai. More info: http://t.co/FjwhR63UWV pic.twitter.com/VTwCddvOLv
— Emirates Airline (@emirates) 2015年9月22日
最終的なゴールはラグビーファンに搭乗してもらうこと
ユニークでラグビーファンが喜ぶアクティベーションばかりであるが、その目的はエミレーツ航空というブランドイメージを高めて、実際に搭乗する顧客を増やすことだ。
ラグビーワールドカップという世界中の注目が集まるイベントでファンと積極的にコミュニケーションを図ることで、エミレーツ航空に好意的なイメージを抱いてもらうことができる。特に今回の施策は、10代半ばのファンを対象にしたものが多く、今の段階で貴重な体験を提供することで、将来的な顧客獲得に繋げていこうとする狙いが見て取れる。
そして注目すべきは、オフラインとオンラインの施策を統合して計画されている点だ。オフラインではラグビーファンにとって心に残る体験を提供し、それをSNSなどのオンライン施策を通して大勢の人々に届けている。こうしたSNS連動型のアクティベーションは現在でも効果的であるため、エミレーツ航空のアクティベーションから学べることは数多くあるだろう。
2015年ラグビーW杯では、 予選プールで日本代表が南アフリカ代表相手に大逆転勝利を収めるなど、日本全体に大きなインパクトを残した。そのラグビーW杯が日本にやってくるこのタイミングで、数々のスポンサー企業がどのようなアクティベーションを仕掛けインパクトを残すのか非常に楽しみだ。