イングランド、プレミアリーグのマンチェスター・シティがマッチングアプリのTinderと複数年のパートナーシップ契約発表している。もともと同郷のライバルであるマンチェスター・ユナイテッドとの契約が噂されていたが、最終的にはマンチェスター・シティと契約をした形となる。
Tinderは、次から次へと流れてくる異性の写真を見て、「好みなら右にスワイプ」、「好みじゃなければ左にスワイプ」で判断し、マッチするとメッセージができる世界中で流行しているマッチングアプリだ。
クラブカラーの水色のバルーンで契約を祝福
Tinderはマンチェスター・シティのメンズチームとレディースチーム、及び同じくシティ・フットボール・グループの米メジャーリーグサッカー所属のニューヨーク・シティFCとともに活動を行なっていく予定で、Tinderファンとサッカーファンが興奮できるユニークな体験を創り出していくこと目的としている。
契約には試合への特別招待企画、一生に一度しかないような体験の提供、スタジアムでのイベントなどを行う権利などが含まれおり、ファンとのエンゲージメントを高める取り組みを今後行なっていく模様だ。そして両者は世界中のミレニアル世代(1980年代から2000年代初頭までに生まれた人々)やデジタルネイティブと呼ばれる若い世代へのアプローチを図っていく。
また、このパートナーシップ契約を祝して、Tinderの機能にも合わせた#PERFECTMATCHと記載された気球を打ち上げてプロモーションも行なっている。Tinderのロゴもマンチェスター・シティのクラブカラーである水色に変わっている。
Get ready for the #perfectmatch! Tinder has taken to the skies to swipe right on the #mancity family. Today, we kick off an exciting new partnership with @tinder for @Cityzens all over the world! pic.twitter.com/7ZomnKHG7w
— Manchester City (@ManCity) 2018年4月5日
互いのファンベースを広げるためのパートナーシップ
このマンチェスター・シティとTinderのパートナーシップは互いのファンベースを世界中で拡大していくことを目的としたパートナーシップだ。
マッチングアプリとのパートナーシップということで、非常に革新的なイメージを与えるものだ。Tinderは特に海外では非常に有名なマッチングアプリであることからもそのインパクトは大きく、世界中の既存のTinderユーザーにアプローチを図ることができる。
そして特筆すべき点は、Tinderがユーザーのあらゆるデータを保有している点だ。Tinderはおよそ200ヶ国で展開され、対応言語も40ヶ国語以上、毎日何百万ものユーザーが利用しているマッチングアプリで、登録時にはFacebookとの連携があり、Instagramとの連携も可能だ。つまりは、Tinderの主要なユーザーであるミレニアル世代の若者の属性や趣味嗜好がどういったものなのか、何に興味があるのかなど、膨大なデータを保有している。これらのデータを活用することでマンチェスター・シティは世界中の潜在的なファンの開拓に活かすことができる。
シティ・フットボール・グループのチーフコマーシャルオフィサーである Tom Glick 氏は「我々(Tinderとマンチェスター・シティ)には共有できる大きなスペースがあります。Tinderはおそらく人々を結びつける世界有数のアプリであり、スポーツは世界中の人々のライフスタイルの大きな部分を占めるものです。我々は即座にこれに気づき、互いの文化や将来のビジョンが非常にマッチしていることから、世界中の若いファンを結びつけることができると考えました。」と述べており、互いの持つ「ファン」を結びつけていこうとする意図が見て取れる。
またTinderとしても世界中の人々の関心を集める強豪フットボールクラブとのパートナーシップは、もともとマッチングアプリに関心がなかった潜在層のフットボールクラスタへのアプローチを可能にするものだ。
何よりTinderにもたらされるメリットは、世界中の人々からのブランドへの信頼であろう。今や世界でも指折りのビッグクラブと登りつめたマンチェスター・シティとのパートナーシップは、信頼できるブランドである証として世界中にアピールすることができる。マッチングアプリという特性上、あまりポジティブなイメージを持つ人々も少ないだろうが、そうしたイメージを払拭しアプリダウンロードの心理的な障壁を減らしてくれる効果が期待できる。
世界中のマンチェスター・シティを始めとするフットボールファン、ミレニアル世代を中心とするTinderユーザー、互いがすでに抱えているファンベースを活用して新たなファンを開拓していくきっかけとなるパートナーシップと言える。
スポンサー企業の持つデータの活用
こうしたスポンサー企業の持つファンデータと、スポーツチームの持つデータを掛けわせてシナジーを生んでいく取り組みは今後も増えていくだろう。特にミレニアル世代へのアプローチは、どこの企業、スポーツチームでも課題となっており、より効果的な活用が求められている。
マンチェスター・シティもTinderも多くのファンデータを抱えていると考えられるため、今後どのようなスポンサーシップのアクティベーションを行なっていくかは非常に興味深いところだ。マッチングアプリとスポーツの先進的な事例としても注目していきたい。