2019年5月12日に開催された、スタジアムにいるような臨場感を味わえるJリーグ初の試み 「Jリーグデジタルスタジアム」に参加してきました。明治安田生命J1リーグ第11節「ヴィッセル神戸 vs 鹿島アントラーズ」@ノエビアスタジアム神戸」が対象で、その名の通りデジタル技術が駆使された新しい観戦体験がそこにありました。
その備忘録として、実体験して感じた優れた点、今後期待される改善点、 会場で実施されていた取り組みなどについてまとめました。
Jリーグデジタルスタジアムとは
「Jリーグデジタルスタジアム」は、 オフィシャルテクノロジーパートナーのNTTグループと共同で取り組む 「JリーグFUROSHIKI( Jリーグが著作権を所有する全てのデジタルアセットを集約し、制作・編集・供給・配信等を一元管理するデジタルアセットハブ )」を活用した取組みの第一弾として開催されました。
Jリーグ公式HPによる 「Jリーグデジタルスタジアム」 の定義は、以下のようになっています。
「Jリーグデジタルスタジアム」とは、スタジアムで行われている実際の試合を様々なデジタル技術を用いてスタジアムから離れた快適な屋内施設にリアルタイムに再現し、スタジアムにいるかのような感覚を体感しながらの観戦・応援はもちろん、従来のスタジアムとは異なる演出が可能な施設での開催により、各種ホスピタリティを付随したハイエンドな映像やデータを活用した観戦体験など、多様化する観戦者ニーズにこたえる各種サービスを提供可能な高臨場・高付加価値スタイルの新たな観戦体験空間です。 引用:https://www.jleague.jp/release/post-58375/
ライブビューイングの優れた点
ライブビューイングに関して、大きく3つの点が素晴らしいなと感じました。
1. スクリーンと音響
会場にはピッチ全体を俯瞰できる高さ4メートル、幅17メートルの大型スクリーンと計26台のスピーカーが設置されました。
— SPODIGI【スポデジ】 (@Spodigi_K) 2019年5月14日
スタジアム全体を見渡せることができるくらいスクリーンが大きいので、まるでスタンドから試合を見ているような感覚を味わうことができます。テレビやDAZNでの観戦だと見切れてしまうオフ・ザ・ボールの動きを追うことができるのも、サッカーファンとしては嬉しいのではないでしょうか。
そして音響についても、熱気と臨場感が伝わってくるものでした。ドルビーアトモスサウンドという技術が活用されているそうです。
技術的なことについては、こちらの記事などに詳しく書かれていますので、興味のある方はぜひご覧ください。
2. マルチアングル&データ
巨大スクーリンの横には、別のスクリーンが設置されており、そこには別アングルで試合を観戦できたり、監督や選手の表情にフォーカスした映像を流したりするなど、様々な観点で試合を楽しむことができました。特に試合をゴール裏から撮影した映像は、横の映像で見るよりも選手のプレッシャーなどをより感じることができました。
また、試合中に選手の走行距離、ボール支配率、選手ごとのヒートマップデータなども映し出されていました。データを見ながら試合を見ることができるのも、「デジタルスタジアム」の醍醐味だと感じました。
前半終了⚽️
試合の合間に様々なスタッツを一緒に観れるのがいいですね💡#Jリーグデジタルスタジアム pic.twitter.com/adKP3uVSJX
— SPODIGI【スポデジ】 (@Spodigi_K) 2019年5月12日
3. ゲストやインタビュー
今回はゲストに以下の方々が参加されましたが、面白いトークだけでなく、来場客である私たちと同じ立場で、率直にデジタルスタジアムへの感想を述べていたのが印象的でした。
- 足立 梨花(女優)
- 播戸 竜二(元日本代表選手・ヴィッセル神戸OB)
- 石井 正忠(鹿島アントラーズOB)
- 日々野 真理(フリーアナウンサー)
また、現地からの中継で、人気解説者である戸田和幸の試合前実況や、鹿島アントラーズの永木亮太選手の試合後インタビューを聞くことができたのも嬉しい体験でした。
キックオフへ向け #播戸竜二 さん #足立梨花 さん #石井正忠 さん #日々野真理 さんがトークで会場を盛り上げます🙌🏼@adacchee @ban11_mr12
かつてない観戦体験を #Jリーグデジタルスタジアム で🏟#Jリーグ
神戸vs鹿島 試合の模様は @DAZN_JPN にて独占配信👀https://t.co/cgC7s3UPdZ pic.twitter.com/dTfImlCodJ— Jリーグ (@J_League) 2019年5月12日
期待される改善点
・ホームとアウェイで席を分けるか
ゲストの方も述べていましたが、ホームとアウェイで席を分けたらどうかという意見が出ていました。確かに、席を分けたほうがサポーター同士の距離が近くなるのでより楽しくなりそうです。
しかし、オペレーションを考えると難しさもあると思います。今回も立地の関係で、サポーターの比率で見ると神戸:鹿島=3:7くらいでしたので、完全に二分した時にチケット販売をどうするかという課題が出てきます。
そのため、ホームとアウェイのサポーターが固まれるような指定席エリアを設け、残りは一般のような形にすれば、それぞれのサポーターのニーズに答えることができるのかなと感じました。
・飲食はどうするか
会場では飲食禁止のアナウンスがされていました。しかし、配布物の中に、スポンサーである山崎ビスケットのスナック「ルヴァン」が入っているなど、一貫性が無いように感じました。また売店などもないため、試合中完全に飲食なしというのは厳しいです。(車椅子エリアの方は、飲み物をデリバリーしてくれるNTTのサービスが提供されていたみたいです。)
「スタ飯」という言葉があるように、スタジアムでビールやご当地グルメを飲み食いしながらサッカー観戦するのも楽しみの一つなので、今回であれば神戸と鹿島のグルメを販売する取り組みがあっても面白いのではないかと思います。
・データやスタッツの表示場所
今回データやスタッツはメインスクリーンとは別のサイドスクリーンに映し出されていました。そのため、試合から少し目を離して確認しなければなりませんでした。
そのため、メインスクリーンにオーバーライドする形で表示したり、ヒートマップであればサッカーコートの大きさに合わせて写してしまうといったことができれば、より「データ×サッカー観戦」の可能性が広がると感じました。
・椅子の有無
筆者が購入したのはA席(自由席)でしたので、座椅子などはなく、カーペットに座るような形でした。正直、2時間この状態でいるのは厳しかったので、何度も足の位置を変えたりしながら観戦しました。また、ずっと座っているのでお尻が痛くなります。一緒にいた友人や周りの人も同じような感想を述べていました。
椅子の用意までなくても、クッションやマイカーペットの持ち込みを認めることで、改善できるかもしれません。または、クッションなど、来場者の負担が減るようなものを提供してくれるスポンサー企業とタイアップなどが解決策に繋がるのではないかと感じました。
ライブビューイング以外の取り組み
エル・ゴラッソの配布
エルゴラッソの号外が配布されました。今回のJリーグデジタルスタジアムで開催される企画の紹介や、裏面は各チームの予想スタメンなどが書かれていました。
・ルヴァン配布
飲食のところでも述べましたが、Jリーグのスポンサーである山崎ビスケットのスナック「ルヴァン」が配布物の中に入っていました。飲食が基本的に禁止だったので、非常にありがたかったです。
・グッズ販売
神戸・鹿島のオリジナルグッズの販売コーナーも設けられていました。支払い方法は、NTTドコモのd払いやiD、交通系電子マネー、クレジットカードに対応しており、キャッシュレスサービスが利用できました。
また、当日限定で、d払いでした方に購入金額の20%相当のdポイントをプレゼントするキャンペーンも実施されていました。
・写真撮影サービス
また、鹿島アントラーズの内田篤人選手と、ヴィッセル神戸の田中純也選手がボールを競り合っている写真に、自分も入り込める写真が無料で撮影できるフォトブースが設けられていました。ファンにその日の思い出に残るものを提供する取り組みです。
この写真撮影には、NTTコミュニケーションズとパナソニックが共同開発したカメラシェアリングサービス「PaN」の技術が使用されていました。
NTT communication のカメラシェアリングサービス「PaN」で、一緒に写真を撮れる企画も💡#Jリーグデジタルスタジアム pic.twitter.com/G6VqHogLUk
— SPODIGI【スポデジ】 (@Spodigi_K) 2019年5月12日
・ゲストとの写真撮影
S席のチケットを購入した方限定で、4人のゲストと一緒に写真撮影をする機会も設けられました。中々お会いできないゲストなので、ファンの思い出に残る体験を提供しています。
Twitter上には、ゲストと記念撮影した写真をアップする方がいました。
・Spolive
試合経過のリアルタイム実況中継や、選手情報、スタッツなどがリアルタイムに表示される「SpoLive」というアプリの体験もすることができました。主に視覚に障害をお持ちの方向けに音声でのサポートや、聴覚に障害をお持ちの方向けにテキストで解説するサービスです。
ルールや選手に関する質問もAIが自動で回答してくれるので、サッカーに詳しくない方もルールを学びながら観戦できます。また、試合の見所や、各チームの戦い方についても解説してくれるなど、試合前の復習にも活かせるアプリでした。
実際に使用してみた感想としては、項目を選ぶだけで簡単に回答を得ることができるのは便利だと感じました。一方で、音声が完全に機械的だったのと、読み上げが完璧では無いのが気になりました。(「CK」を「コーナーキック」ではなく、「シーケー」と読み上げていました。)こちらはこれから改善が期待されます。
SpoLive という試合実況や解説が聞けるアプリの体験も💡
AIボットに質問するとすぐに答えが返ってきます💡 pic.twitter.com/LgyhtbcPcl
— SPODIGI【スポデジ】 (@Spodigi_K) 2019年5月12日
・勝敗予想
Jリーグ公式アプリ「Club J.LEAGUE」から勝敗予想をして、的中した方全員にdポイント500ptをプレゼントする企画も実施されました。参加するためには、Jリーグ公式アプリ「Club J.LEAGUE」にてdアカウントを連携しなければなりません。
インセンティブを与えて、アカウントを連携するユーザーの増加、dポイントサービスの利用者増加を図っています。
まとめ
初の試みとして「Jリーグデジタルスタジアム」は成功したと言えると思います。大型スクリーンと迫力ある音響だけでも、スタジアムにいるような臨場感を味わうことができただけでも、本当に素晴らしい体験でした。いくつか期待される改善点はありますが、多くのファンの声を集めて、どんどん改良されていくと思います。
こうしたライブビューイングは、普段行けないアウェイ戦を応援する場の提供、コミュニティーの醸成、新しい形のエンターテイメントの提供など、様々な存在意義があります。デジタルテクノロジーが発展していくことで、こうした新しいスポーツの楽しみ方が広がっていくと感じます。
そして、今回のJリーグデジタルスタジアムに多くの技術提供をしたNTTグループの取り組みは本当に素晴らしいです。ファンに貴重な体験を提供するだけでなく、Jリーグのスポンサーとしての権利を活用し、自社テクノロジーのショーケース利用、そしてグループ全体のブランドイメージ向上に繋がっています。Jリーグ×NTTグループの取り組みには今後も注目していきたいです。
第2回Jリーグデジタルスタジアムの開催が今から非常に楽しみです。
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