今回は、バルセロナのスポンサーを務めるカタール航空(Qatar Airways)のスポンサーシップのアクティベーションをご紹介します。
先日、楽天とバルセロナの2016/17シーズンからのスポンサー契約が報じられました。これにより、来シーズからカタール航空に変わり「楽天」が胸スポンサーを務めることになります。
現行のカタール航空はどのようなスポンサーシップのアクティベーションを行ったのでしょうか?今回は数ある事例の中でも、全世界で多くのリーチを獲得したユーモアのあるキャンペーンビデオを紹介します。
バルセロナの選手たちを起用した「Safety Video」
カタール航空は2012年11月からFCバルセロナのスポンサーになると共に、商業スポンサーとしては史上初のバルセロナのユニフォーム胸スポンサーになりました。
そんなカタール航空が制作したキャンペーンビデオとはどういったものなのか?
まずは次の動画をご覧ください。
このビデオは2015年12月に配信されました。
メッシ、ネイマール、スアレス、ピケなど、多くのバルセロナのスター選手が起用されています。また、サッカーのシチュエーションと飛行機内の安全ガイドを掛け合わせており、非常にクリエイティブなビデオとなっています。
また、機内wifiガイド用のビデオもあります。
カタール航空のマーケティング担当者であるSalam Al Shawa氏は次のように述べています。
「我々は、一般的な機内安全ガイドビデオを見る乗客の体験と、情報伝達の重要性を考慮に入れました。そのため、ビデオは魅力的で有益なものになるように制作しました。」
「FCバルセロナとの戦略的パートナーシップを活用し、乗客をカンプ・ノウ・スタジアムに連れて行くことで、我々は乗客のユーザーエクスペリエンスを向上させつつ、「Going Places Together」というブランド・プロミスを実現させました。」
ここで述べられている「Going Places Together」は、このビデオと共にカタール航空が発表した新しいキャンペーンスローガンです。カタール航空のプレスリリースによると、このビデオが配信された2015年から約1ヶ月間で全世界約4000万回近くのソーシャルメディア上での視聴があったと述べられており、キャンペーンの認知に大きく貢献したと言えるでしょう。
ビデオ再生回数の点からも大きな成功を収めたこのキャンペーンビデオ。どういった点が優れているのか考察します。
1. 機内安全ガイドとサッカーのシチュエーションのコラボ
このビデオの一番の特徴と言えるのが、機内安全ガイドの音声とサッカーのシチュエーションが組み合わされている点です。
審判が携帯電話の電源を切っていないので試合が中断。選手を見て興奮する女性ファンに差し出される酸素マスク。様々なシーンでクスっと笑ってしまう仕掛けがたくさん施されています。
クリエイティブなビデオは非常に拡散されやすく、多くの人々の関心を集めます。さらに、サッカー界のスター選手を多く抱えるバルセロナとのコラボであるためその拡散力は非常に大きいです。
スポンサーとしての権利を活用し、バルセロナの選手を起用したクリエイティブなビデオを発信することで、キャンペーンの認知拡大、ブランドイメージの向上を図った非常に巧みなアクティベーションです。
2. ただクリエイティブなだけでなく2つの目的を果たしている
Salam Al Shawa氏が述べているように、エアーラインサービスにおいて、乗客の安全は最重要と言えます。その上で、機内安全ガイドは重要な役割を果たします。
機内安全ガイドを効果的に乗客に見てもらうための施策がこのビデオと言えるでしょう。バルセロナの選手を起用したクリエイティブなビデオは非常にキャッチーであり、乗客が自然と機内安全ビデオを見るように促しています。
そして、「Going Places Together」というブランド・プロミスの認知拡大にも貢献しています。この「Going Places Together」はカタール航空がアメリカ路線に最新鋭の機材、A350を投入することに合わせて発表したものです。この新しいキャンペーンに際して、Safety Videoを発表することで効果的に認知度を高めています。
機内安全の効果的な情報伝達、新しいキャンペーンの認知拡大、この2つの目的を果たす上で非常に効果的なキャンペーンビデオであると言えます。
楽天はバルセロナとのパートナーシップをどう活かすのか?
来シーズンからはカタール航空が行ったようなマーケティング活動を、楽天が行えるようになります。バルセロナという世界中の注目を集めるサッカーチーム、バルセロナが抱えるスター選手、これらのリソースを巧く活用することが楽天には求められます。
カタール航空とはそもそも業種は違いますが、インターネット企業として楽天がバルセロナを活かしてできるマーケティング活動は数多くあると思います。4年総額257億円ともいえる契約金を無駄にしないためにも、様々な施策を打っていくことでしょう。
真のグローバル企業へと歩みだす大きな一歩とも言える楽天とバルセロナのスポンサー契約。カタール航空が行った事例などから習い、多くの効果的なスポンサーシップのアクティベーションが行われていくことを期待したいです。