今回は、オリンピックのワールドワイドパートナーである、韓国の総合電機メーカー「Samsung(サムスン)」によるスポンサーシップのアクティベーション事例をご紹介します。Samsungの契約カテゴリーはWireless Communication Equipment(ワイヤレスコミュニケーション設備)です。Samsungはリオオリンピック&パラリンピックに際して、スポンサーとしての権利を活用しユニークなキャンペーンを仕掛けました。
Samsungによるスポンサー活動
Samsungは昨年のイギリスラグビーワールドカップなど、多くのスポーツと関わり、スポーツマーケティングを行ってきました。
今回のリオオリンピックでは、多くの企業が”オリンピック”だけのスポンサーを務める中、Samsungはパラリンピックのワールドワイドパートナーも務める数少ない企業です。
スポンサー合計数 | ワールドワイドパートナー合計数 | |
リオオリンピック | 59 | 11 |
リオパラリンピック | 27 | 4 |
上記の表のように、オリンピックにスポンサーする企業の方が多く、オリンピックもパラリンピックもワールドワイドパートナーはSamsungを含めて4社しかありません。(Atos(フランスの情報技術企業)Panasonic(日本の総合電機メーカー)Samsung(韓国の総合電機メーカー)Visa(アメリカのクレジットカード)の4社)。
*リオオリンピックのスポンサー企業一覧をご覧になりたい方はこちらから。
*リオパラリンピックのスポンサー企業一覧をご覧になりたい方はこちらから。
今回のリオオリンピック&パラリンピックに際して、Samsung は様々なキャンペーンやプロモーションを実施し、また自社製品をアスリートに提供するなど多角的にスポンサーとしての権利を活用しています。その中でも「School of Rio」と名づけられた、ちょっとユーモアのあるキャンペーンを今回はご紹介します。
School of Rio キャンペーンとは?
このキャンペーンはTeam GB(オリンピック&パラリンピック イギリス代表)と組んで行われました。
どのような点が優れているでしょうか?大きく3点が挙げられます。
1. イギリスの人気コメディアンの起用
このキャンペーンはイギリスのオリンピック選手団と組んだものであるたため、イギリス国内に最も反響があったでしょう。さらにイギリスで有名なコメディアンであるジャックを起用することで、オリンピックに興味のある人々に加えて、ジャックのファンの人々にもアプローチを図っています。
ジャックのツイッターのフォロワー数は5,131,692人です。これは日本の芸人フォロワー数ランキングで2位の松本人志(4,111,516)よりも多い数字です。(一位は有吉の6,092,141人。2016年9月29日現在の数字。)
国民的コメディアンを起用することで、スポーツとコメディーという一見繋がりの薄そうな分野を結びつけています。そうしてスポーツとコメディーに興味を持っている潜在層へのアプローチを可能にしています。敢えて、アスリートではなくコメディアンを起用するSamsungの巧みな戦略です。
2. プロダクトのプロモーション
このキャンペーンはただのコメディー要素のあるプロモーションビデオではありません。Samaungがアピールしたい自社製品の強みをもとに制作されています。今回ご紹介したパラリンピックのスイミング選手とのビデオでは、「Resilience(回復力)」がテーマです。
彼女たちが如何にResilienceを鍛えているのかを紹介し、彼女たちと同様にSamsungの製品も水を受けても耐えられるだけのResilienceがあるということをアピールする狙いが見て取れます。
このように、自社製品の強みを選手の強みと重ね合わせることで、普通とは異なる手法で製品のプロモーションを可能にしています。
3. ラグビーワールドカップからの継続
実はこのプロモーション、今回のオリンピックが最初ではありません。2015年にイギリスで開催されたラグビーワールドカップでも、「School of Rugby」と名付けた同じキャンペーンをSamsungは実施しています。
手法も同じで、ジャックを起用し、製品のプロモーションを同じように行いました。ラグビーはイギリス含め全世界で極めて人気の高いスポーツです。この「School of Rugby」も大きな反響を生み、今回のリオでも引き続けて行う戦略をSamsungは取りました。
同じ内容のキャンペーンを2つの大会で継続して行うことで、「ジャックが出ているあのちょっとおもしろいキャンペーンをやっているのはSamsungだ!」というブランドイメージを定着させる狙いがあると見て取れます。
2つの大会を分けて考えるのではなく、継続したストーリーを伝えていくことで、結果としてブランディングに繋がるSamsungの優れたマーケティング手法です。
スポンサーシップのアクティベーション手法は無限大
今回ご紹介したSamsungによるスポンサーシップのアクティベーションは、コメディアンの起用、ラグビーワールドカップからの継続など、これまでにあまり見られなかった手法が用いられています。オリンピックに関連するマーケティングには様々な制約がありますが、ルールに沿って行えばその可能性は無限大です。
Samsungは2020年の東京オリンピックでもスポンサーを務めることがすでに決定してします。Samsungが今後どのようなスポンサーシップのアクティベーションを魅せてくれるのか、これからも注目です。