高級自動車メーカー「ポルシェ」がサッカー・ドイツ代表サミ・ケディラを、自社のユース選手育成プログラムである「Turbo For Talents」のアンバサダーに任命したことを発表している。
サミ・ケディラは2014年ブラジルワールドカップで優勝したドイツ代表のメンバーの一人で、現在はセリエAのユベントスに所属するスター選手だ。このアンバサダー就任により、ユース選手のトレーニング支援や各種プログラムに参加し、ユース選手の支援を行なっていく。
Turbo For Talents
「Turbo For Talents」はサッカーや、バスケットボール、テニス、アイスホッケーの若い選手を、スポーツ選手として、そして立派な大人に育成するために設立されたプログラムだ。
ケディラだけでなく、すでにドイツ・ブンデスリーガのシュトゥットガルトやライプツィヒ、バスケットボールチームのMHP リーゼン・ルートヴィヒスブルク、ドイツ代表女子テニスチームといったチームへのスポンサーシップを通して提携を組んでいる。
このプログラムを通して、ユース選手たちはプロの選手からコーチングを受ける機会を設けられたり、特別なトレーニングを受けることができるなど、多くの貴重な体験をすることができる。
中でもポルシェがスポンサーシップを効果的に活用して行なっているのが「Porsche Coaching Bank」という取り組みだ。この「Porsche Coaching Bank」は、ポルシェがスポンサードするライプツィヒのホームゲームにユース選手を招待し、ピッチ近くの専用のブースで試合観戦ができるものだ。こうしたブースを設けることができるのもスポンサーシップの特権であり、その権利を効果的に活用している。
Ein ganz besonderer Platz! ☺Die Gewinner des Gewinnspiels unseres Partners @Porsche auf der #PorscheCoachingBank, zusammen mit @lukaskl96 pic.twitter.com/QOQJHSByev
— RB Leipzig (@DieRotenBullen) 2016年11月6日
RB Leipzig Porsche Coaching Bank: Besondere Aktion für junge Fans – Mitteldeutsche Zeitung: Mitteldeutsche Zeitung… https://t.co/E8gIbDk8jx pic.twitter.com/MYEdodjdXe
— GutenByte (@gutenbyte) 2017年4月3日
ユース選手たちへの支援を積極的に行うポルシェだが、ケディラを新しくアンバサダーに任命した理由、また「Turbo For Talents」を推し進める狙いは何なのだろうか。
同郷のスター選手をアンバサダーに起用
「Turbo For Talents」のアンバサダーにケディラが任命されたのは、ケディラがポルシェの本社と同じシュトゥットガルトの出身であること、ケディラがスポーツ選手として真のプロフェッショナルであると評価されたことが要因であると考えられる。
ケディラはシュトゥットガルトのユースアカデミーで育ち一流のサッカー選手になった。そんなケディラは、すでに「サミ・ケディラ・ファウンデーション」という財団を立ち上げており、シュトゥットガルト地域を中心とした障がいを持つ子供たちを支援する取り組みを行なっている。
ポルシェの理事会副委員長であるLutz Meschkeはこう述べている。
「我々のユース育成プログラムのパートナーにサミ・ケディラを迎えることができて嬉しく思います。彼はこの地域で育ち、才能ある若手から素晴らしい人間性を持った代表選手に成長しました。加えて、若い人々をスポーツ面と社会面でのサポートを重要視する彼の取り組みは、我々ポルシェと同じです。」
このように述べていることからも、同じシュトゥットガルト出身で、若い子供たちの支援を行うケディラとポルシェの取り組みは非常に重なる部分が多くあるため、方向性が一致したことが任命理由であると考えられる。
「Turbo For Talents」の狙い
「Turbo For Talents」を主催するポルシェの狙いは自社のターゲット層へのアプローチとブランディングであると考えられる。
このプログラムは、一流の選手たちからサポートを受けれたり、スタジアムのピッチ間近で観戦できる機会を提供している。また、社会的にも立派な人間に育てたいという想いも込められたプログラムであることから、スポーツ選手としてだけでなく精神的な成長も期待できる。
こうした取り組みは、ユース選手やその両親、ユースを所有するチームのファンにとっても好感の持てるものだ。この「Turbo For Talents」を通して、ポルシェがユース選手の支援を行なっているというポジティブなイメージを人々に植え付けることができる。
また、同郷のケディラをアンバサダーに任命したり、地元のスポーツチームとの連携を強めるなど、シュトゥットガルト地域との関係性を強めている。世界的に有名な高級自動車ブランドであることから、地域に密着した取り組みを行うのは少々意外ではあるが、だからこそ地元を大切にする姿勢は非常に好感が持てるためブランディングに繋がるだろう。
ポルシェの潜在的な購買客になるのはある程度の収入がある富裕層であると考えられる。「Turbo For Talents」で支援を行うスポーツにも幅広い層のファンがいる。ユース選手の子供を持つ親やそのスポーツの富裕層のファンにプロジェクトを通してアプローチを図り、ブランドイメージを向上させる。そして最終的には自動車の販売増加に繋げることがポルシェの狙いだろう。
ポルシェとケディラの今後
企業がスポーツ選手をアンバサダーに任命しプロモーションを行う事例は数多くあるが、その企業とスポンサードする選手、そのスポーツの関連性が薄いと、印象に残りづらい。そうした意味で、シュトゥットガルト出身で同じく若い人々の支援を行うケディラとポルシェのコラボレーションは非常に明確で伝わりやすい。
今後ポルシェとケディラは様々な取り組みを行い「Turbo For Talents」を盛り上げていくだろう。ブランディングに繋がるマーケティング的な側面はありながらも、そのスポーツの発展を考えた非常に素敵な取り組みだ。今後、両者による新たな取り組みが増え、そのスポーツの発展とサポートするユース選手の中から、ケディラのような真のプロフェッショナルなスター選手が生まれることを期待したい。